活動内容

国内・海外の関連団体および放射線治療実施施設で行われている医療安全の取り組みを収集し、発信する。国内の放射線治療実施施設において、医学物理士が多職種との連携および医療安全への貢献を促進するための活動支援を行う。高度化する放射線治療において、リスク分析の導入のための支援と普及を目指し、安心で安全な放射線治療提供体制を目指す。

医療安全委員会委員

委員長
 岡本 裕之 (国立がん研究センター中央病院)
副委員長
 西岡 史絵 (京都第二赤十字病院)
委員
 石原 佳知 (日本赤十字社和歌山医療センター)
 五十野 優 (大阪国際がんセンター)
 小野 智博 (京都大学医学部附属病院)
 木藤 哲史 (がん・感染症センター都立駒込病院)
 千葉 貴仁 (国立がん研究センター中央病院)
 水野 統文 (埼玉医科大学総合医療センター)
 溝口明日実 (久留米大学病院)

医療安全に役に立つ資料

翻訳 ASTRO report「安全は偶然に生まれない」

URL:https://www.jastro.or.jp/medicalpersonnel/safety/safety_is_no_accident.pdf
解説:本レポートは、医師、医学物理士、診療放射線技師、看護師および関連する全ての学会・団体の協力のもとで作成され、放射線治療部門の実施体制について指針が示されています。ASTRO の許可を得て翻訳を行っています。また2019年には改訂版が刊行されています。
https://www.astro.org/Patient-Care-and-Research/Patient-Safety/Safety-is-no-Accident
第2章の付録には医学物理士の必要配置数について、年間患者数、放射線治療装置数、放射線計画装置数などから見積もることができます。あくまでも米国の安全基準をもとにした見積もりであり、本邦とは実施体制が異なることに注意し参考値としてご活用ください。

翻訳 AAPM task group 100「放射線治療の品質マネジメントへのリスク解析法の適用」

URL:https://www.jastro.or.jp/medicalpersonnel/safety/aapm_task_group_100_report_202105.pdf
解説:放射線治療にリスク分析の導入を支援するためのガイドラインです。リスク分析を導入することで効率的かつ効果的に品質マネジメントが実施できます。リスク分析のおおまかな流れは、放射線治療プロセスマップの作成、故障モードの洗い出し、故障モード影響解析(FMEA)を用いたリスク分析、対策の検討となります。FMEAとは、事象における発生頻度、影響度、検出難易度を定量評価する方法で、高リスク事象の特定を行い積極的に対策を講じることが目的となります。様々な視点で高リスク事象を特定するためにもリスク分析を主としたチームを作り多くの職種が参画することが重要です。近年では装置の品質管理 (AAPM Medical Physics Practice Guideline 8.a) や治療計画のチェック (AAPM TG-275) においてもリスク分析が導入されています。

翻訳 AAPM task group 275「放射線治療における効果的な治療計画/カルテレビューのための方策」

URL:https://www.jastro.or.jp/medicalpersonnel/safety/cat4/
解説:治療開始前に行う治療計画および電子カルテの確認作業は、臨床現場で働く医学物理士にとっては重要な任務の1つです。AAPM TG-40以来治療計画の確認項目も含めた包括的なQAに関するガイドラインはなく、TG-275ではじめてリスク分析の考えを導入した指針となっています。TG-275では、治療前の初回レビュー、週毎のレビュー、治療終了後のレビューに分けられます。週毎のレビューの主な確認項目は、治療部位と計画部位の比較、また新しい部位や既に照射された部位が医師によって変更されていないかどうかなどがあげられます。治療終了時のレビューは、部門の方針に従って文書化が完了されていること、処方線量が照射されていること、医師の治療サマリーが作成されていることなどがあげられます。本文のTable S1.A.iでは治療計画の推奨チェック項目が示されています。自施設で運用している治療計画のチェック項目と比較し、不足項目についてご検討いただければと思います。

SAFERON, Safety Reporting and Learning System for Radiotherapy, IAEA

URL:https://www.iaea.org/resources/rpop/resources/databases-and-learning-systems/safron
解説:世界各国の放射線治療に関するニアミスなどの事例を収集しています。収集された事例についてはNucleusのアカウントを作成することで調べることができます。検索においては、発見者の職種別、発生場所(カルテチェック、装置の品質管理、初回治療など)など、検索条件を詳細に設定することができます。

RO-ILS, Radiation Oncology Incident Learning System®

URL:https://www.astro.org/Patient-Care-and-Research/Patient-Safety/RO-ILS
解説:ASTRO及びAAPMが主催する米国内のインシデントの報告及び学習システムです。実際の施設で起きたエラーを共有し学習する仕組みを提供することにより、放射線治療の安全と質を促進する事を目的としています。なお登録においては米国の施設のみとなっています。データベースを基に様々な教材を提供しており、報告書やケーススタディなどのレポートは公開されています。

RIRAS, Radiotherapy Incident Reporting & Analysis System

URL:https://www.cars-pso.org/MainPage.aspx
解説:The center for Assessment of Radiological Sciences (CARS) は、放射線治療の有害事象やニアミス事象、good catch(発見に成功した事例)がデータベース化されています。提出されたデータは、放射線腫瘍学の専門家かつ産業工学やヒューマンファクターへの見識が深いチームメンバーによって調査・分析が行われます。インシデントについては匿名の提出も可能です。本サイトに学習システムが用意され、簡単な統計についてはグラフがWeb上でレビューできます。例えば、患者アセスメント時、画像撮影、計画立案、照射前の準備や検証、照射、治療中のマネジメント、治療後の過程において、どのステージでエラーがよく起きるのかなどが調べられます。

医療事故情報収集事業、公益社団法人 日本医療機能評価機構

URL:https://www.med-safe.jp/mpsearch/SearchReport.action
解説:日本医療機能評価機構においては、全国の医療機関から提出されたヒヤリハットを含む事例集が検索できます。放射線治療の事例を検索するためには、発生場所を放射線治療室で検索すると数多くの事例が確認できます。

QI、放射線治療部門における品質保証および医療安全のQuality Indicator

URL:https://sites.google.com/view/rtqi/home
解説:「患者が受けてしかるべき医療」と「実際に行われた診療」との乖離を達成率として数値化した指標として定義されます。がん診療連携拠点病院等の整備に関する指針では、QIの積極的な利用が提案されています。本サイトにある研究活動では、放射線治療部門での品質保証およひ医療安全において、QIの導入を提案しています。2019年に実施したがん診療連携拠点病院を対象としたQIアンケート調査の結果も閲覧できます。自施設の放射線治療提供体制を見える化することで医療スタッフのパフォーマンス改善や患者アウトカムにつながることが期待できます。