一般財団法人 日本医学物理士会理事長 福士 政広

令和2年7月1日

2020年は1964年以来2度目のオリンピック・パラリンピックが開催され注目の年となるはずでした。しかし、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミックの影響でオリンピックの延期が決定し、さらに世界経済への大きな影響が心配される状況となりました。年頭には考えもできなかったことが全世界的に進行しております。先ずは一刻も早い新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の終息を願うところであります。
 さて、本邦の医学物理士は医学物理士認定機構が実施する医学物理士認定試験および認定審査に合格した者です。現在1,213名の認定医学物理士が臨床・研究・教育に従事しております。また2019年より、治療専門医学物理士も新たに誕生致しました。
 本邦においての認定医学物理士の大部分は放射線治療分野で活躍しております。また治療専門医学物理士はより専門性を活かし、大いに活躍するものと確信しております。医学物理士の先進国である米国においても、80%程が放射線治療分野に従事しており、本邦も同様の傾向を示しております。欧州での医学物理士の役割の多くは治療計画と品質管理を主に担当しております。我が国おいては2003年の医療事故を受けて受験資格緩和を契機として物理士数の増加が顕著でありましたが、近年は若干頭打ちの傾向が見受けられます。
 現在、がん拠点病院における医学物理士認定者の状況としては、がん拠点病院全体としては六割程の施設に在籍しており、IMRT実施がん拠点病院では九割以上の施設で医学物理士が活躍しております。このことは高度な放射線治療を実施している施設では医学物理士はなくてはならない存在となっている証拠でもあります。しかし、IMRT実施割合の国際比較では米国の1/7と少なく、お隣の韓国の1/2でもあります。
 我が国における放射線治療患者数は着実に増加傾向にあります。増加する患者に満足のいく放射線治療を実施するためには医学物理士の適切な配置は不可欠なことであると思っております。医学物理士が医療現場で専従として活躍することで、放射線治療の安全性と精度が向上し、高精度放射線治療件数が増え、放射線治療の治療成績が向上することにより、ひいては国民の健康が増進されることが大いに期待されます。医学物理士の専門性と責任を明確にしつつ、チーム医療の一員として他の職種との共存共栄の下、放射線診療の適切な管理および安全性の向上を図るためにも、医学物理士の確固たる資格認定を望むところであります。
 そのためには、関係諸団体と学会およびがん患者をはじめとした国民のご理解の下、協同して進めて参りたいと思います。医学物理士会会員の皆様のご理解とご協力を切にお願い申し上げます。