一般財団法人 日本医学物理士会
理事長 福士 政広
令和5年4月1日
新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミックの影響も漸く改善が見られ、世界の国々で人々の大来も活発になってきております。我が国においてもマスクや飲食店での制限の緩和など定常状態に戻りつつあります。ただし、コロナ下で定着したオンライン化の波は社会生活の中にしっかりと根を下ろした感があります。デジタル化のスピードがより一層進むことと考えます。
さて、医学物理士は、医療現場において医療技術の向上や放射線被ばくの軽減などを目的として、医療用機器の管理・維持、放射線治療装置の精度管理・品質保証、線量測定や被ばく評価、放射線防護などを担う専門職であります。医学物理士の主な業務には、以下のものがあります。
- 放射線治療における装置開発、物理的品質管理を通じて放射線治療に貢献する。
- 画像診断装置の開発、画質向上と被ばく線量と画質の管理を通じて放射線診断に貢献する。
- 放射性同位元素を用いた診断や治療を行う装置の開発、画質向上および被ばく線量と画質の管理を通じて核医学診療に貢献する。
- 放射線による害を最小限に抑え、放射線防護・安全管理に貢献する。
本邦の医学物理士は、医学物理士認定機構が実施する医学物理士認定試験および認定審査に合格した者で、現在1,427名(2022年12月1日現在)の認定医学物理士が臨床・研究・教育に従事しております。また、2019年より治療専門医学物理士も新たに誕生し、79名(2022年4月1日現在)が同様に従事しております。本邦においての認定医学物理士の大部分は放射線治療分野で活躍しております。また治療専門医学物理士はより専門性を活かし、大いに活躍するものと確信しております。医学物理士の先進国である米国においても、80%程が放射線治療分野に従事しており、本邦も同様の傾向を示しております。また、欧州での医学物理士の役割の多くは治療計画と品質管理を主に担当しております。アジアにおいても各国で要請され、放射線治療の現場で働いております。各国での医学物理士の役割や業務は、その国の医療制度や文化、法律に応じて異なっております。
現在、がん拠点病院における医学物理士認定者の状況としては、がん拠点病院全体としては六割程の施設に在籍しており、IMRT実施がん拠点病院では九割以上の施設で医学物理士が活躍しております。高度な放射線治療を実施している施設では医学物理士はなくてはならない存在となっています。
我が国における放射線治療患者数は着実に増加傾向にあります。増加する患者に満足のいく放射線治療を実施するためには医学物理士の適切な配置は不可欠なことであります。医学物理士が医療現場で専従として活躍することで、放射線治療の安全性と精度が向上し、高精度放射線治療件数が増え、放射線治療の治療成績が向上することにより、ひいては国民の健康が増進されることが大いに期待されます。
また、診断領域、核医学治療領域および放射線防護領域においても医学物理士の専門性が大いに期待されております。 今後は医学物理士の責任と業態を明確にしつつ、チーム医療の一員として他の医療職種との共存共栄の下、放射線診療の適切な管理および安全性の向上を図るためにも、医学物理士の確固たる資格認定を望むところであります。
そのためにも、関係諸団体と学会およびがん患者をはじめとした国民のご理解の下、協同して進めて参りたいと思います。医学物理士会会員の皆様のご理解とご協力を切にお願い申し上げます。