一般財団法人 日本医学物理士会
 理事長 福士 政広


令和8年2月1日

 医学物理士は、現代医療において不可欠な専門職であり、医療技術の高度化とともに、放射線被ばくの低減および医療安全の確保を目的として重要な役割を担っています。医学物理学の専門知識を基盤として、放射線診療の質と安全性を科学的に支える存在であり、臨床現場における責任は年々増大しています。
 具体的には、以下のような業務を通じて放射線診療への貢献が期待されています。

  1. 放射線治療における機器の開発・保守・物理的品質管理を通じて、治療品質および安全性の向上に寄与すること。
  2. 画像診断装置において、最適な画質と被ばく線量のバランスを追求し、診断能と安全性の両立を図ること。
  3. 核医学診療に用いる放射性同位元素を活用した検査・治療の管理および評価を通じて、画質向上と適正線量管理を実現すること。
  4. 放射線防護および安全管理により、患者、医療従事者、さらには地域住民を含めた放射線リスクの最小化に貢献すること。
 また、医学物理士は医師、診療放射線技師、看護師などの医療職種と密接に連携し、チーム医療の一員として診療の質と安全性の向上を継続的に追求しています。
 本邦における認定医学物理士は、一般財団法人医学物理士認定機構(JBMP)が実施する認定試験および審査に合格した者であり、2025年1月時点で1,539名の認定医学物理士が、臨床、研究、教育など多岐にわたる分野で活躍しています。また、より専門性の高い治療専門医学物理士については、約100名が認定を受けています。
 日本における医学物理士の大きな特色として、放射線治療分野に従事する医学物理士の割合が高い点が挙げられます。これは、放射線治療計画や装置品質管理が治療成績および医療安全に直結するとの認識が広く共有されていることを背景としており、米国や欧州などの先進諸国における医学物理士の役割とも共通する傾向です。一方、欧米諸国では、診断領域や核医学、放射線防護分野においても医学物理士が法制度上明確に位置付けられ、職域がより広範に確立されている点が、本邦との相違点として挙げられます。
 がん診療連携拠点病院における医学物理士の配置状況を見ると、全国のがん拠点病院全体の約6割に医学物理士が在籍しており、IMRT(強度変調放射線治療)を実施する施設に限れば、9割以上で医学物理士が関与しています。このことから、高度放射線治療を提供する医療機関において、医学物理士が極めて重要な役割を果たしていることが明らかです。
 本邦における放射線治療患者数は年々増加しており、質の高い放射線治療を安定的に提供するためには、十分な人数の医学物理士の配置が不可欠です。医学物理士が専従で医療現場に従事することにより、安全性と精度の高い放射線治療が実施され、高精度放射線治療症例数の増加や治療成績の向上につながり、最終的には国民の健康増進に大きく寄与すると期待されます。
 さらに、診断領域、核医学領域、放射線防護領域においても、医学物理士の専門性に対する期待は今後一層高まると考えられます。そのためには、医学物理士の責任および業務範囲を明確化し、他の医療職種と相互に尊重し合いながら共存・共栄する体制を整備することが重要です。あわせて、国際的な動向も踏まえた資格認定制度および教育体制のさらなる充実が求められます。
 これらの取り組みを推進するためには、関連団体、学会、医療従事者、ならびに国民の理解と協力が不可欠です。関係各位のご支援を賜りつつ、今後も協働して医学物理士の役割の充実と社会的貢献を一層推進していく所存です。医学物理士会会員の皆様におかれましても、引き続きご理解とご協力をお願い申し上げます。