PDCAサイクル
品質改善の際によく行われるプロセスであり、医療分野のみならず産業分野やサービス業界など様々な分野で導入されています。「がん診療連携拠点病院等の整備について(健発0801第16号令和4年8月1日)」においても、医療の質の改善の取り組み及び安全管理を行う場合には、Quality IndicatorやPDCAサイクルの利用を推奨しています。PDCAは、「Plan(計画)」、「Do(実行)」、「Check(評価)」、「Action(改善)」の頭文字をとった用語です。例えば、品質改善が必要な場合には、どのような対策が必要かを議論し、実行に移し効果を評価します。依然として改善が必要な場合にはPlanへと戻り、繰り返しPDCAサイクルが行われます。重要な点は、日常的に品質改善に気づくことで、PDCAサイクルを動かすためにも様々な視点で理想と現実のギャップを評価することが重要となります。ヒューマンファクター
事故やエラーの多くは人間の行動によるものです。人間である限り、間違えは犯すものであり、人間を取り巻くシステム全体でそれらの間違いを防いでいくというのが、現代のリスク管理の主要な考え方です。つまり、ヒューマンエラーが起こる背景には組織や環境等に不良が有り、それらの根本原因に対する対策や起こった際の影響の緩和を行わなければ、同様の事故やエラーが起こり得ます。人間が介在するシステムにおいて、人間はそのシステムを構成する一要素と考えます。この中での人間、使用するツール、職場、周辺環境と人間の相互作用などについて研究する学術分野のことをヒューマンファクターといいます。ヒューマンファクターではエラーを起こした人間の責任を追求するのではなく、人間を含んだシステムの中の要因を探っていきます。
シェルモデル
ヒューマンファクターの概念を理解するために提案され、ヒューマンエラーの分析にも使われています。様々に派生したモデルがありますが、その中でもよく用いられるものがm-SHELLモデルです。中央にL: Liveware (当事者)がおり、その周りにS: Software (マニュアル・教育・作業標準)、H: Hardware (装置の設計・配置・装置と人とのインターフェイス)、E: Environment (作業環境)、
L: Liveware (周りの人)が接しており、m: Management (管理)がその周りを回っているという図です。 中央のLと接する要素S・H・E・Lがそれぞれ波線で囲われているのは、それぞれの要素の特性や能力をあらわしていて、これらがうまくかみ合うことでヒューマンエラーを防いでいます。またm (管理)が周りを回っているのは、全体を俯瞰して各要素をうまくかみ合わせるためのものであることを意味しています。m-SHELLモデルの他に、医療であれば、P: Patient (患者)の要素が追加されたP-mSHELLモデルもあります。