新しい医学物理士認定制度

一般財団法人医学物理士認定機構理事 鬼塚昌彦 平成21年11月

日本医学放射線学会(JRS)と日本医学物理学会(JSMP)の協力のもとに、平成21年3月2日付けで一般財団法人医学物理士認定機構(以下機構)が設立され、医学物理士認定事業(以下認定事業)は日本医学放射線学会から機構へ引き継がれることになりました。これに伴い、医学物理士認定基準も見直しが行われ、認定試験や更新も新基準で実施されます。改正されたことにより、認定事業がこれまでに比べ対外的に見え易くなることが期待されます。移行による混乱も予想されますので会誌紙面をお借りし、新認定基準の骨子を説明致します。詳細な認定条件については、これから公示される規定をご覧ください。JSMP2009において特別報告会「新しい医学物理士認定制度」でも情報を提供致します。

(1)これまでの認定制度と医学物理士の社会情勢

まず、新しい認定制度の理解のためにもこれまでの医学物理士の認定制度を振り返ってみます。これまでは、医学物理士の資格認定は日本医学放射線学会が行い、その実務を担当していたのは日本医学放射線学会医学物理士委員会です。医学物理士認定制度規定(2002年)の第7回改正により、大きく変革されました。この時に、認定試験の受験資格と認定の申請資格が分離されました。また、この第7回改正では、保健学科の修士の学生は一定の基準を満たせば修士終了前に認定試験を受験できるようになりました。即ち、認定試験と認定を分離することにより、保健学科修士の学生に大きく門戸が開かれました。また、診療放射線技師として5年以上の臨床経験があれば受験資格が得られ、認定試験を受験できるようになりました。この時の改正の主旨は、「医学物理士の職制は基本的にそれを担う者の能力にのみ依存し経歴には依存しないものとする」というものです。医学物理士は理工系の学部出身者でその分野の博士号を持つ研究者・教育者だけではないことが打ち出されました。この規定改定により2003年度以降、医学物理士認定者の放射線技師免許所持者は急速に増加し、2009年2月末日現在では認定総数は430名に達しています。医学物理士を取り巻く社会情勢も変化し、2008年(平成20年)の厚生労働省通知において「放射線治療における機器の精度管理、照射計画の検証、照射計画補助作業等を専ら担当する者(診療放射線技師その他の技術者等)が1名以上配置されていること。」と記載され、その他の技術者は医学物理士、放射線治療品質管理士として、公的に診療報酬の中で医学物理士が認知されました。また、文部科学省は2007年に、質の高いがん専門医等を養成し得る内容を有する優れたプログラムに対し財政支援を行うことにより、大学の教育の活性化を促進し今後のがん医療を担う医療人の養成推進を図ることを目的として、「がんプロフェッショナル養成プラン」が設定されました。それにより、大学院において医学物理士養成コースが設けられ、医学物理士教育が開始されました。

(2)新認定制度の主な改正点

認定基準において、大きな骨子としては修士レベルが基本となります。修士レベルを基本とすると述べましたが、基本的にはこれから大学、短大、専門学校などに進学される方には修士レベルが要求され、在学者や既卒者には従来の基準が適用されます。つまり、これから教育課程を経るものに対して適応されるものです。放射線技術系専門学校や放射線技術系短大を卒業者について述べてみます。平成20年度以前のその卒業者は、平成23年度まではこれまでと同じ基準で受験が可能です。平成24年度以降は、放射線技術系専門学校や放射線技術系短大を平成20年度以前の卒業者に対しては、その従来の基準は廃止されます。改正後は、平成20年度以前のその卒業者に対しては、受験までの医学経験年数基準が5年間から8年間に長くなります。この医学経験年数が長くなることは、平成20年以前のその卒業者に対しては全く障害にはなりません。つまり、年度措置により従来の基準を満たす卒業者は、いつでも受験が可能なのです。ただし、平成23年以降のその卒業者には、修士レベルが要求されることになります。

第7回改正の「医学物理士の職制は基本的にそれを担う者の能力にのみ依存し経歴には依存しないものとする」という主旨は、明確に保持されています。欧米の認定条件は物理学を大学および大学院で修めた者に基本的に限定されていますが、機構の認定基準では理工系修士と医療技術系修士の間には全く差は存在しません。医学物理士に求められる基礎的素養はその名称が表しているように物理的素養だと考えるのが一般的通念であり、医学物理士の質を担保する試験に合格すれば医学物理士として承認されるものです。求められる医学物理士像の基準は日本医学放射線学会医学物理教育カリキュラムガイドライン(2008年2月)に定められています。この中には医学物理士に要求される項目がリストとして掲載されています。これは、機構に引き継がれ一般財団法人医学物理士認定機構医学物理教育カリキュラムガイドラインとして放射線治療、分野放射線診断分野、核医学分野の全ての分野を含むものとして整備されます。この改正は、「がんプロフェッショナル養成プラン」における、医学物理士の大学院における養成とも適合し、また欧米の認定基準に比較しても決して厳しい条件ではありません。機構になり新たに加えられた認定条件があります。機構には認定委員会が設けられ、前述のカリキュラムガイドラインに定められた水準に対応した医学物理士教育がおこなわれているか応じて機関の認定を行い、受験基準のメリットが与えられます。理工系修士課程や放射線技術系修士課程が医学物理教育課程と認定された場合(医学物理系修士)には、修士在籍1年で受験資格が得られます。